039 鈴木主税『私の翻訳談義』

言葉を一対一で対応させていくのは翻訳ではない、背景知識があって内容を理解しなくては翻訳はできない、と耳の痛い話ばかり。だがそれはそうなのだ。翻訳者になる前の下積みの現実(十年位前の話だけれど)、編集者との関係など、「翻訳者になりたい!」とかのムックや職業案内には書いていないような現実世界の話も詳しい。翻訳、日本語と英語の差、などに関して引用した本も各章ごとにまとめて紹介されているのでブックガイドとしてもよいと思う。著者の言うように、文章読本を読んだからといって日本語か書けるようになるわけではないのだが、独りよがりにならないためにもそういう本にも目配せしておく必要があるのではないか。