長谷川イザベル『共和国の女たち−自伝が語るフランス近代』

パリのお針子、ブルジョワの令嬢、農村に生まれ育ち小学校教師になった女性、ジャーナリズムで活躍した女性の四人の自伝を元に、各時代のフランス女性の生き方をまとめたもの。冒頭は著者の家族の女性(母や祖母、自分自身)を紹介している。
女性にはろくに教育を施さず(令嬢に対してすら、よき妻よき母になる以上の教育は無駄なものとされた)、多くの女性は苦しい生活を強いられながらそれを甘受して生きていた時代の中で、自ら立ち上がって行動し、自分の考えを文章に残した女性(特に前半の三人)の人生に対する著者の目は共感に満ちている。日本で結婚は今もなお女性にとってのセーフティネットである面は残しているように思うし、それどころか社会性を測る物差しとしても機能していると思うので、著者が描く、女性が1968年五月革命で男性の振る舞いに幻滅しフェミニズムの運動に参加し、その後結婚という枠組みもほぼ崩れてしまったフランス、というのにあこがれを抱いてしまう部分がある。男性はこういう本を読んでどう思うんだろうね。五月革命で女性が結局は男性と同じ立場に立てなかったというくだりで、松浦理英子がエッセイで、団塊世代の男性を批判していたのを思い出した。
山川のこのヒストリアというシリーズは同じ山川のリブレットより取っつきやすくておもしろい気がする。もっといろいろと出してほしい。

共和国の女たち―自伝が語るフランス近代 (historia)

共和国の女たち―自伝が語るフランス近代 (historia)