044 山崎美緒『マンゴーと丸坊主』

日本人女性で初めてアフリカを単独自転車縦断したその旅行記録。ノリよくテンポよく大阪人らしいしゃべりで笑いも盛り込み読みやすい。地元での溶け込み方がすごい。言葉が少し話せるからといって溶け込めるかというとそういうものではないと思うので。
アフリカ縦断の動機は、世界は広くておもしろくて、それを知らずに社会に出てしまっていいのか?という思いだったと思う(これも本が手元にないのでおぼろげ)。そういう発想がアフリカ縦断につながってそれを実行してしまった人は著者だけだけど、そのような焦燥感に駆られて留学したりいろいろなことをする人がけっこう周りにいたように思う。うまく説明できないが、わたしにとって社会に出ることそのものがひどく恐ろしく、自分にできるとは思えず、モラトリアムを抜け出せるかどうかも自信がなく、大学生活というモラトリアムとされている期間にやれるだけのことをやろうという発想がなかった。いつ抜け出せるか分からないモラトリアムを満喫しようとはあまり思わないものだ。あの焦燥感は、今をいかに生きるか、という焦燥感とは全く別物だと思う。うまく時間を切り取ってその中で目いっぱい何かをしようという生き方が生産的なのだと思う。そういうまぶしさに目を細めてしまった本だった。

マンゴーと丸坊主―アフリカ自転車5000km!

マンゴーと丸坊主―アフリカ自転車5000km!