Anaya, Rudolfo. Bless Me, Ultima

ようやく読了。長かった。
平原を放浪し、風と共に生きる父の家系と、大地に根を下ろして農業を営む母の家系との狭間で、またキリスト教の神と、それ以外の神々との狭間で、スペイン語と英語との狭間(これは大きなモチーフではないにせよ)で揺れ動く少年の物語。人物造形に深みが!ということもなく善悪はどこまでもはっきりしており、ふたつの世界が明確に書き分けられている。
短期間にいくつもの理不尽な死に直面した少年は神の答えを渇望するが、キリスト教の神は沈黙を続ける。遠藤周作の『沈黙』にも神よ、なぜ黙っておられるのですか、と問いかけるシーンがあったように思う。代わりに少年に何らかの救いをもたらすのはネイティブアメリカンの神や、民間療法士のようなウルティマの世界であった。
チカーノ文化や、女性の書き方(とてもマチスモ)について考えるよりも、宗教についての話と考えた方がおもしろく読めるように思った。そのためにはカトリックをもう少し知らないとなんとも分からないが。
司祭になるのが一つの理想とされるような、カトリックの行事やしきたりが生活に根付いている社会が懐かしさをもって記述されているのが昨今の昭和ブームを少し思わせたり…。

Bless Me, Ultima

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