酒井邦秀『快読100万語!ペーパーバックへの道』

絵本レベルから始めてGraded Readerや児童書などを利用して語数を徐々に上げ、ペーパーバックを普通に読めるようになるまで続けるという勉強法。辞書は引かず、文法書も参照しない。とにかく文脈から英語が体に染みこんでいくのを待つ。
口を極めて学校英語を罵っているけど(そこまでではないか)、そんなに悪いものかね。この本を読むのはおそらく大人だろうし、幼児に戻って絵本レベルから読書を重ねていくのもしんどいなと思ってしまう。学校英語でそれなりに上手くやってきた人と、普段から読書が好きで、日本語で楽しんでいるレベルの本をできれば読みたい、と思っている人には不向きだと思う。あとスパルタ勉強が好きな人にも不向き。まずGraded Readerは内容をはしょりすぎておもしろくないから本好きには不満だろうし、「楽しく、気楽に、知らないうちに英語を身につけよう」というコンセプトなので、多少無理する方が性に合う人には向いてないんじゃないかな。語学の勉強はしんどいことも必要だと思うんだけど、どうなんでしょう…。
学校英語に不備があるのは仕方がないとして、利点もたくさんあるのではないかと思う。それなりに効率がいいし(この効率を著者は批判するわけだけども)。問題は、英語に触れる量が少なすぎることではないか。中学校で訳読しても、一年で子供向けの小説一冊分の英語にも触れない。文法事項だけ覚えて問題に当てはめていくのは苦行だけど、自分が快適に読める英語の文章に触れながらなるほど、と納得していけば効果も高い。考えてみれば、この100万語読もうという勉強法を実践しているのはたいてい英文法をかつて詰め込んだ大人だから、著者は「学校英語は洗い流さなければならない」とは言うもののその知識が生きていないことはないと思う。
英語に触れる量を増やす方法としてはいいと思うのだけど考え方が違いすぎて違和感ばかり…。でも本に触れまくるのはいいと思うので、幼児レベルから始めるという著者のコンセプトからは外れるけど、アメリカのヤングアダルトから読みはじめた。元アメリカ文学専攻としてはこれでもなんだか情けない気分になるけど、大人向けの文学は辞書なしで読むのはしんどい。
スペインにいた頃、留学生仲間(ドイツ人とか)が図書館でよくヤングアダルトを借りていた。日本でもそういうのを図書館に揃えたらいいのに。いきなり、専門書を辞書と首っ引きでゴリゴリ読ませるのには無理がある。

快読100万語!ペーパーバックへの道 (ちくま学芸文庫)

快読100万語!ペーパーバックへの道 (ちくま学芸文庫)