竹下節子『聖母マリア―「異端」から「女王」へ』

処女でありながら母であるような女性が崇拝の対象で理想だなんて、あんまりだとマリア様を見るたびに思っていた。普通の人間では実現不可能なことである。
オリエントの一乙女が神の子の母となり、キリスト教の広まった土地にもともとあった女神たちを飲み込んでたくさんの意味を身につけていった。マリアは現在にあっても数々の奇跡を起こし、信者の前に(信者でないものの前にも)現れてメッセージを残し、人々を熱狂の渦に巻き込む。前の法王であるフアン・パブロ二世も熱烈なマリア信奉者だったそうである。
筆者本人もマリア熱に浮かされているような文章なのであまり学術的な感じがしないが、マリアの生涯から、御出現や数々の奇跡、教義をめぐる争いなど各章がとても興味深いのでマリア様に興味があればおもしろいと思う。
この著者はキリスト教の研究者だけど、最近はアメリカにノーと言える国、みたいな本も書いているらしい。

聖母マリア (講談社選書メチエ)

聖母マリア (講談社選書メチエ)