野谷文昭『マジカル・ラテン・ミステリー・ツアー』

エッセイや論考をまとめたもの。『ラテンにキスせよ』ではプイグ関連の論考やインタビューが充実していたように思うが、この本ではキューバに関する記述が目立つ。スペインの文学、キューバ、アルゼンチン、ブラジル、日本、そしてプエルトリコや北米に至るまでの目配りの広さには舌を巻く。
何か一つのことを論じるときに別の文献や映画やなんやらが次々と引っ張り出されてくるので、あまりなじみのない分野だと当惑してしまうこともしばしば。なので、これから読もうとする人ではなく、少しラテンアメリカ文学に触れたことがある人向けのブックガイドとしていいと思う。レポートを書くときのヒントもたくさんありそうだが、残念なのは文献(特に外国語の)の出所があまり明らかではないこと。論文ではないから、仕方がないのかな…。

マジカル・ラテン・ミステリー・ツアー (五柳叢書)

マジカル・ラテン・ミステリー・ツアー (五柳叢書)