フランソワーズ・ドルト『赤ちゃんこそがお母さんを作る―ドルト先生の心理相談〈1〉』

『フランスの子どもは夜泣きをしない』でも、フランスで今も強い影響力を持つと紹介されていたドルト先生の子育てお悩み相談ラジオ番組の書き起こし。子育てというものにコミットしたことがないので、どれを読んでもあんまり現実味がないのだが、答え方にこれは日本語で、私の感覚でアドバイスに従うのは難しいだろうな、というものもあった。基本的に、子供に一人の人格を認めて、言葉で論理的に伝える、ということが重視されていて、「ツーカー」とか「母この交わりによって通じ合う」みたいなのはない。大人相手にも論理的に言葉で伝える訓練ができているとは言えないので、子供相手に難しいだろうなと思った。また、性に関しては、日本の家庭でどのような教育が現在行われているのかはわからないけど、例えば、包茎尿道下裂の手術をするときに、相手がまだ乳児で言葉を話さないような頃であっても、「この手術をするとそのあと痛くて辛いけど、これを乗り越えればお父さんのような立派な陰茎になるのですよ」と言い聞かせてやる、という話などは自分が語りかけているところが想像できない。
あと、このドルト先生は精神分析医なので、エディプスコンプレックスの話なども出てくるのだが、息子または娘が、父親(母親)の地位を簒奪しようともくろみるとき(たとえば、父親が不在のときに父親の定位置の椅子に座ろうとするとか)、親は「あなたは夫ではないのだから、私の夫の席を取るべきではない」と言わなければならないらしい。このようなときは常に、「あなたのお父さん」ではなく、「私の夫」とすることと。こういうの、日本語だったらどう言ったらいいのかな。ボキャブラリーがないんじゃないかな。もちろんあるけど、子供に語りかける言葉としては、非常に他人行儀な感じになるというか…。そもそも、家庭において「妻と夫」というパートナー関係が表に出てくることってあんまりないような。
それから、触りまくってはいけないらしい。キスしたり過剰にべたべたするのはよくないんだそうだ。
新生児期の動物のような頃から、個人として認めて、一人の人間として言葉をかけて扱う、きちんと(できるだけ)論理的に話してやる、というのは心に留めておきたいと思っている。できるかどうかは別にしても。スキンシップ好きだからべたべたべたべたしてしまいそうだがその辺も自重した方がいいのかもしれないな。

赤ちゃんこそがお母さんを作る (ドルト先生の心理相談 (1))

赤ちゃんこそがお母さんを作る (ドルト先生の心理相談 (1))