マタドール 炎のレクイエム

画像と音楽が私の知っているアルモドバルらしくなってきた。

あらすじ
敬虔なオプス・デイ信徒の母親と共に暮らすアンヘルは、母親に黙って闘牛教室に通っている。教室の講師ディエゴにゲイではないかと疑われたアンヘルは、帰宅後同じアパートに住むディエゴの恋人エバを暴行しようとするが未遂に終わる。翌日、アンヘルは警察に出頭、暴行を自白すると共に、現在捜査中の殺人事件2件と行方不明2件は自分の犯行と自白して逮捕される。アンヘルには女性弁護士マリアがついた。ある日エバを家に送った際に、ディエゴはマリアと出会う。死にとりつかれた者同士、激しく惹かれあうが、マリアはディエゴを殺そうとし、その後もかわし続ける。一方、アンヘルは片耳の調子が悪く、めまいがする時には暗示にかかりやすいことが分かった。マリアは接見のたびに、どうも何かを吹き込んでいるらしい。アンヘルの告白から闘牛教室のクラスメートの遺体がディエゴの邸宅の庭から発見される。しかし、警察署長と精神科医にはアンヘルが犯人とは思えない。
ついにディエゴから別れを告げられたエバは自宅まで押しかけるが、そこで、ディエゴとマリアの会話からディエゴがアンヘルの自首した犯罪の本当の犯人であることを知ってしまう。逃げられないことを悟ったディエゴとマリアは、マドリード郊外の別荘に行き、セックスをしながらマリアがディエゴを刺し殺し、その後自殺して果てる。

メモ

  • 階段シーンあり。ビルのらせん階段を鮮やかな赤いドレスを着て、赤いストールを巻いたエバが駆け下りていく。階段からは落ちない。これはアルモドバルの特徴ではなくて、他の名作へのオマージュなのかもしれない。螺旋階段は上から映すと視覚的に美しいから他にも使っている映画はたくさんあるのだろうと思う。
  • この赤いドレスは闘牛を興奮させるマントなのかもしれない。
  • オプス・デイをおちょくっている。アンヘルのお母さんはとても敬虔なオプス・デイで、息子よりも神を信じている。アンヘルと母親の家には召使いまでいて、時代が違うかのようだ。
  • 劇中日食が起こるが80年代にスペインでは日食は起こっていない。
  • ショーの準備のシーンに出てくるスタイリストはアルモドバル本人。
  • ショーの準備のシーンで、ドラッグを注射している人が腕に巻いているのはスペイン国旗の色のリボン。ショー自体がスペインらしさを過剰に押し出したものと思われる。
  • 話としては、失楽園みたいな感じを受けた。失楽園は人殺してないか。
  • アンヘルの母親は太腿に棘付きのガーターを巻いていたけどあれは誇張なのかはたまたオプス・デイの人にとっては一般的なのか。
  • アンヘルの超能力はいきなり開花したわけではなくて、前から見えていたと考えていいのだろうか。だからこそ、先生の罪を被ったのか。
  • 冒頭の殺人ビデオは映画かと思っていたが、ディエゴが殺す過程を映したスナッフビデオも含まれている。
  • 警察署長はゲイなのかな?教室を見学した時に生徒達の股間のアップのショットが続く。

語句メモ

Desde luego, no gano para medias.
棘付きガーターを足に巻きながらアンヘル母が言う台詞。多分こう言ってると思う。no ganar para...は、WordReferenceのフォーラムによると、"algo se repite demasiadas veces y eso no es bueno"だそうである。「ストッキングを買っても買っても追いつかないわ。」ということか。Diccionario Salamancaの"media"の項の例文にも"No gano para medias, enseguida se me rompen."とある。