Pepi, Luci, Bom y otras chicas del montón

Laberinto de pasionesと共に、la nueva movida madrileñaの空気をよく伝える作品とのこと。フランコ政権だったらできなかったこんなことも、あんなことも、映画にできちゃう!という感情の爆発が感じられる気がする。

あらすじ
ペピは家で違法薬物を栽培しているのを見とがめ家に来た警官にレイプされる。復讐のため、友人達に頼んでぼこぼこに殴ってもらったが、なんとそれは双子の兄弟だった。変わらず元気なのを見て方針を変えたペピは、警官の妻ルシに近づいて編み物を教えてもらうことにする。ルシが真性マゾで、警官と結婚したのもいたぶられることを期待したからなのに期待通りの扱いを受けていないことに不満であることに気づいたペピは友人のボンを紹介。お互いをすっかり気に入った二人は行動を共にするようになる。親からお金をもらってパーティーにクスリにと好き放題やっていたペピだが、ある日父親から電話がかかり、もう送金しないと言い渡されたので、持ち前の想像力を生かして広告会社の経営を始める。一方ルシとボンはあまり最近うまくいっていないようだ。三人でパーティーに出かけた先で待ち伏せをしていた警官にルシが見つかり、ルシは散々殴られてついに夫と理想的な関係を結ぶ。姿を消したルシをボンは心配するが、ある日ルシから電報が届く。警官により半殺しになり入院中だった。ボンとペピは病院に駆けつけるが、ルシはボンの扱いでは満足できなかったこと、警官が自分を憎みきっているので手ひどい扱いを得られるから、これを逃すことはできないことを告げる。気落ちしたボンをペピは慰め、自分の家に来るように、また今までのポップではなくボレロを歌っていったらどうかとすすめる。

メモ
英語版を見たのですが、これにはJosé Arroyoというイギリスのワーリック大学の先生の解説が付いていました。それによれば、

  • この作品は低予算で、予算はたったの500万ペセタ(2000ポンド、つまり3-40万円か?)だった。そのため、78年に始まった撮影は2年間続き、終わったのは80年だった。また、プロデューサーでもあった警官役フェリックス・ロタエタを含む、友人達が出資した。
  • アルモドバルの記念すべき第一作と言うだけではなく、アンダーグラウンドシーンから出てきた、新しいスペイン映画第一作とも言える。
  • 70年代後半からのスペインにおける主流映画は大体2つに分かれる。ストリップ映画(女優が脱ぐようだ。50年代のスター、カルメン・セビージャすら脱いだ)とポルノである。後者は例えばエマニュエル夫人シリーズであり、70年代後半の主な劇場ヒット作だった。
  • スーパーマンなどのアメコミ、アンダーグラウンドコミックも劇中見ることができる。また、Hola!に代表されるセレブのゴシップ文化も見られる。
  • 最も影響を与えていると思われるのは、ジョン・ウォーターズの映画。
  • 80年代スペインで大きな影響力を持った人々がこの映画で初めて世に出てきた。例えば、ボン役のAlaska、オープニングのイラストやボン達が住む家の(実際にAlaskaの家だったらしい)壁に描かれた絵を描いたCostus、ドラッグクイーンのFabio McNamaraである。
  • (アルモドバルの言葉を引いて)アルモドバルにとっては、モビーダ・マドリレーニャとは、他のヨーロッパの文化の影響を受けつつ、フランコ体制(の崩壊だと思う)に一部のグループが反応し、新時代の自由な空気を謳歌し、それが社会的な変化とも連動していたというものである。

以上のことを踏まえると、むちゃくちゃやっているけど浮かれている雰囲気、やりたいことは全部やってしまおうという爽やかさすら感じられる気がしてくる。巨根総選挙Erecciones Generalesだって、スペインで43年ぶりに総選挙が行われたのはこの映画撮影開始の前年1977年ということを考えると、総選挙という単語自体が目新しく、興奮を持って迎えられていたと想像できる。Elecciones Generalesとニュースで連呼されるのを聞いてこれってereccionesだったらおもしろいよね!となったのかもしれない。
一夜にして民主制に移行して何もかもが解放されたのではなくて、フランコが死ぬ数年前から少しずつ少しずつ緩くはなってきたのだろうけど、フランコが死んでから5年でこれほどにも変わってしまうものだろうか。同じことは日本の戦後にも言えるのかもしれないが。