La caza

VHS*1スペイン語で映画を見る教室で見た。
1966年の作品。監督はカルロス・サウラ。1980年代以降「カルメン」「血の婚礼」などスペイン的なもので人気を博したが、それ以前には実験的な作品を多く撮っており、シネフィルにはそちらの方が評判が高いのだとか。
ストーリーは単純。スペインの内戦を共にフランコ側で戦った昔なじみの中年男三人組(パコ、ホセ、ルイス)+パコの義理の弟エンリケジープに乗って兎狩りへ行く。久しぶりの仲間との楽しい狩猟のひとときのはずだったが、何気ない一つ一つのできごとが積み重なって緊張感が高まり、ついには…。
先生によれば、鑑賞のポイントは以下(☆は私のメモ):

  • フランコ政権下で撮られているため、検閲に引っかからないようにかなりぼかされているが、主人公たちの言動から内戦の影が読み取られる
    • 例えば、パコはトラックの運転手をしていたと言うが、一体どこでなのか?エンリケが尋ねても答えようとしない
    • 銃を扱うときの手慣れ方が不穏な空気☆(気のせいかもしれないが…)
    • フアンは片足が不自由である☆
    • 狩猟区に着いたときに「ここでたくさんの人が戦争で死んだ」と三人のうちの誰かがコメントしていたような気がする☆
    • 骸骨がある洞穴?のような場所(ルイスの秘密の場所?それをホセ?に教えて激高される。人名が分からない…)☆
  • おじさん三人組+狩猟の世話をするフアンと、エンリケ+フアンの姪っ子カルメンとの世代の違いに注目
    • 戦争を経験しているか否かのみならず、人生のどのステージにいるか?によるとらえ方の違い。老いへの不安
    • エンリケがパコの写真を撮ってパコに見せると、パコはその写真を破り捨てる。容貌の衰えへの恐怖。一方、カルメンは写真に大喜び(カメラなど見たことのないような生活のためもある)
  • 狩猟に出かけている人々と、その他の庶民(というか、ホセの土地に住んでいるほとんど奴隷のような人々)との生活の落差
    • 狩猟を行っているのはホセが所有している土地である。
    • 同い年くらいでもtuで話さず、Ustedで話す間柄。主従関係がはっきりしている。
    • 狩猟メンバーの持ち物、着ている服の美しさと、フアン、カルメンの薄汚さの対比
  • 鑑賞のポイントではないが、実際に兎狩りが行われて兎が大量に死んでいるので動物好きな人は注意
    • フランコ政権は映画のメッセージ性を読み取ることなく、オリジナルのままで公開された。しかし、スペイン国内では観客は内容を必ずしも理解できたとは言えず、興行成績も大したことはなかった。ちなみに、ベルリン映画祭で銀熊賞を受賞している。

動物はたくさん死ぬし、衝撃のラストは心地よいものではないし、後味のいい映画とは言えないけれど、ふとした拍子に口に出すすぐ側にいる人への不信感、嫌悪感が絡み合う緊張感と、ギラギラするやたら生々しいおじさんのはだかの大写しなどの美しくはないが鮮やかな映像が後を引いてもう一度みたいと思わせる。
ストーリーを追う際に、名前と人の顔を結びつけるのが難しい。三人とも同じように禿げているし、体型も似ている。特に、パコとホセは難関。観賞後になってしまったけど、Reino de Reine: La Caza / 狩りを読んで復習して、やっと誰が誰だったかはっきりしました。犬を連れているのがパコだと思ってたし…。生徒はもちろん、先生すら混乱していたので、かなり難しいのだと思います。

*1:官営カルチャースクールのようなもの。誰でも通える。語学、職業訓練的なもの、スポーツ、料理、等プログラムは多彩。