049 神崎宣武『おみやげ―贈答と旅の日本文化』

外人にとってかなり興味深いらしいおみやげ文化。会社など、おみやげ三昧だなあ。まさに義理の世界。「みなさんでどうぞ」とちゃんと人数分そろったものを買わなければならないので、小袋に入っているもの、饅頭のように1つ1つ包装してあるもの、そして適度に1つ1つの大きさが小さめなのが好ましい。
本書は「手みやげ」と「旅みやげ」と2章に分かれている。神社からのありがたいご利益を持ち帰ったり、実家と嫁ぎ先とで餅などをやり取りする「手みやげ」、神社仏閣への参拝のご利益を持ち帰る(伊勢神宮などで、伊勢神宮への参拝を取り次ぐとして現在の旅行代理店兼旅館のような総合旅行業者がいたのに驚く)ことから説き起こし、交通の発展とともにかつては旅人のみが楽しめた地元の名物を持ち帰るようになった「旅みやげ」。江戸時代には交通網が整備されて安全な旅が楽しめるようになり、なんと荷物郵送サービスもあったらしい。そのおかげで、金銭に余裕のあるものに限られるが、地元の名産品を買い込んで家の近辺まで送るということもできた。
10年ほど前まで正月の集まりをしていて、三十人ほどが集っていた。各家が集まる家族分のおみやげを用意して大変だった。最近は「おもたせ」なんてのがあったけどあれもおみやげだな。おみやげと普通の贈り物との違いは何かと言ったら、おみやげは義理が前面に出て、うまく贈った先で分配できるかどうかがとても大切というところなのか。

おみやげ―贈答と旅の日本文化

おみやげ―贈答と旅の日本文化