030 中島岳志『ヒンドゥー・ナショナリズム―印パ緊張の背景』

現代において、倫理の崩壊に問題意識を抱き宗教を求める心情に共感を抱き、大きな変化を遂げつつあるインドにおいてインドの文化を見直しながら広範な活動を行う愛国主義的団体を調査するも、それがナショナリズムへと回収されることには疑問を覚えるというのが大まかな論点(といっていいのか)。宗教的心性の復活および伝統への回帰は日本でも見られるだろうし、新しい愛国潮流に惹かれながらも違和感を拭えない著者の意見は非常に今注目を集めるテーマなんだとおもう。知らなかったがけっこういろんな人と論争したり対談したりしている有名人のようだ。
神話の実在を確かめてヒンドゥーの正当性(およびムスリムへの優位)を確認しようとする試み、とか、いかがわしいのだけれども惹かれてやまない部分がある。
あとこういう何らかの集団に入り込んで調査ってかなり難しいのだろうと感じた。あまり友人になりすぎるわけにもいかず、まったく見ず知らずの自分とかなり異なる人々の中に入り一定の信頼関係を築いてとるものは取らねばならない。