谷崎潤一郎『文章読本』

びっくりするほどの国威発揚、及び東西文化の二項対立。「いかに日本語で書くか」というよりも、「日本語で書くとはいかなることか、日本語の背景にある素晴らしい文化」について書かれた本である印象を受けた。時代背景を考えれば当たり前のことかも知れないが。現代ではすっかり「守るべき日本語」となっていそうな言葉が昭和初期にはまだ新語や造語であり、谷崎にとっては忌まわしいものであったことが興味深い(「待望」など)。外国語からの翻訳が、漢字という便利なものがあるだけに容易に行われて、嘆かわしい状況も生んでいるという描写は、カタカナ語が意味も分からず溢れかえる現代においては奇妙にすら映る。

文章読本 (中公文庫)

文章読本 (中公文庫)