池内紀『姿の消し方』

姿の消し方 幻想人物コレクション

姿の消し方 幻想人物コレクション

最近二ヶ月くらい本の感想を書いてなかったから、何書いていいのか分からん。おもしろい/おもしろくないで切るのはよくないという。特に理由を書かない場合は。ふだん自分が経験した細かい出来事について分析することは出来るのに、書物の世界について何も言えないのは不思議な気もする。それはそれで一つの世界だと言うことも出来るからだ。まあうまく書こうと思ってしまう辺りに原因があるのだと思う。
で、感想を。もうタイトルの付け方だけでずるい。副題は「幻想人物コレクション」。そういうのが好きな人だったら、もう手に取ってしまうと思う。主にドイツ語圏を中心とした、おもしろ人物コレクション。しがない一官吏だが、帝国中に自分の名前を落書きしまくって超有名人になったキュゼラーク。カフカの恋人。姿の消し方が最高にうまい詐欺師(この世からの姿の消し方も最高)。時代を先取りしすぎたユダヤ人。読書する過程で思わぬ知り合い方をした様々な気になる人々をスクラップし、それを分類して「人間コレクション」を作った結果がこの本らしい。本と、少しおかしな人に対する慈しみが溢れていて読んでいて幸せな気分になる本だと思う。書物からこんなにも楽しいことをくみ出せる人には嫉妬してしまうな。