写真はカプリーチョスの壁。

九時くらいに起きてシャワーを浴びる。十時前に朝食。五人に一本のフランスパン、コーヒーとミルクとココアは飲み放題、マドレーヌのようなものも付いていてみな満足。

宿の人に話を聞くと、オランダ人家族が経営していているのでオランダからもたくさん来るが中心はスペイン人の子供のグループ。アクティビティもたくさんしている。イギリス人は、ただ海岸に行きたいだけだからここには来ない、と言ってた。宿の感じのよさとアクティビティの充実ぶりを見て、Gは早速将来の生徒たち(スペイン語の先生になるつもりなので)を連れてくる計画を立てていた。

庭には梅の花がもう咲いていた。

宿を出てコミーリャスへ。ガウディ設計のカプリーチョスを見たり、屋敷や大学を見たりした。道ばたにはもう春の花が咲き始めていた。とにかく天気が悪く、雨が降ったりやんだり時にざあざあ降りになったり。傘を持っているのは私とSだけ、しかも折りたたみ傘、他の人はジャケットのフードをかぶってしのいでいた。そこまでして観光するのかというほど。私一人だったらまず何もしないだろう。人と旅行すると二倍以上のものを見る。

駐車場に向かって歩いていたら雨があまりにも激しくなり、墓地で雨宿りをする。墓地の中の建物(何かは分からない)で雨が弱まるのをしばし待つ。無事雨も弱まったので、車の方に戻り、近くにあった店で昼食。

今日のメニューを再び頼む。海に近いところなので、魚のメニューを。貝と白インゲンの煮込み、鯖の焼いたの、デザートにこの地方名産のチーズケーキ。あまりに多かったのでチーズケーキは半分くらいGにあげる。昨日の煮込みと同じものをKが頼んでいて、どうも昨日のよりおいしかったらしい。私がこの日食べた煮込みもちょっと塩辛かったけどおいしかった。魚介類のスープはとてもおいしいので、作り方を知りたいと思っているのだけど、同居人のレシピにはないらしく、作ってるのを見たことがないから教えてもらうことはできなさそう。

店を出て、Gと共に少しだけ街を歩く。他の人は寒いし疲れているので車に戻った。私も凍えきっていたが街を散策するのは好きなので一緒に行く。歩きながら彼のふるさとの話や家族の話を聞く。二百頭の羊を飼い、レンズ豆を作る有機農園らしい。こっちでは農家の子もけっこう多く、それに誇りを持って話す。何より故郷に対する誇りがすごい。日本で、「私の村(町)は最高だから一度遊びに来てね」と言われた経験はない。関西の人は自分の土地に誇りを持っているけど、「関西」とか「京都」っていうくくりで話すし、自分の街、ていうのとは違うと思う。名古屋の人はたいてい自分の街全然好きじゃないし…。自分の育った場所が好きだっていうのはよいことだなと思う。残念ながら私はあまり好きではないけど。移動が多いからその場所に愛着を持ちすぎないようにしている、というのもある。

コミーリャスからはサン・ビセンテ・デ・ラ・バルケラへ。天然の良港で、古くから栄えていたところ。訪ねたとき、天気は最悪。寒いので教会で暖まろう、と入ったらお葬式をしていたので出る。Gに葬式は日本ではどんなんか、と聞かれるが全然覚えていなくて答えられない。少しだけ歩いて今度はお城。お城に行くまでは、ヒョウまで降ってもう大変だった。ヒョウが積もるくらい降った。

城の内部にはいろんな展示があってぐるぐる見て、いちおう塔にも昇って、見学を終える。お城の受付の人に寄れば天気がよければPicos de Europa(カンタブリア山脈だと思う)を背景に海、街が見渡せるらしく、とても美しいらしい。でもこの日はほとんど嵐。受付の人はバジャドリードから来た、というと「あそこの風景はきれいじゃないからね。お城とか、建物があるから別の魅力はあるけど」と言っていた。みな同感。カンタブリアは緑が多くて、みずみずしい。日本の風景とは全然違うけれど、どこか日本を思い出させる。

城を出てからは即座に車に向かう。私は途中で同居人のためにお菓子を購入。

あまりに雨がひどいので、おそらく山間部では雪がひどいことになっているだろう、と電話で道路情報を確認すると行きに使った道は雪とのこと。チェーンを持っていないので、雪道は走れない。もう帰れないのではないか、という雰囲気になったがビルバオ経由でブルゴスに抜けられることが分かり、その道を取ることにした。

しかし、ビルバオからはひどい雪で、一面の雪景色。しかもどんどん積もっていく。なぜか除雪車もいなくて、のろのろと運転するしかない。再び帰れない可能性が…。「この夜を忘れない」などという歌詞の曲がちょうどかかって盛り上がったりする。二時間ほど雪景色の中走ったあと、再び動き出したのでなんとかなった。その後も何度か雪に見舞われたけど、ブルゴスを過ぎてしばらくしてからはほとんど雪もなくなり、バジャドリード直前は140キロくらいで走っていた。

十二時半くらいに家に送り届けられ、旅はおしまい。

今回は私はほとんど何もしてない。りんごすらむいてない…。