ドイツに帰国。豚インフルの検査はドイツ入国時全くなく、マスク着用は日本人だけ。日本の大騒ぎと対照的。
日本では入院中の祖母を見舞った。家族が遊びに来ないとここ数年嘆き続けていたが、死を目前にしてたくさんの友人親戚に毎日囲まれている。介護の人との相性もよく、家族よりも信頼して甘えきっている。何より驚いたのは、不仲だと思っていた祖父を誰よりも愛していたことで、その夫婦愛には親戚一同びっくりしている。息子や娘を忘れても祖父のことは忘れず、うわごとでも「おとうさん」と呼び、挨拶をせずに祖父が帰ろうとすると手を伸ばして抗議すると言う。結婚当初から祖母は祖父に惚れ抜いていたらしい。祖父は祖父で、毎日二回見舞いに訪れている。「年を取っても手をつないでなかよし」という感じでは全くなく、見合い結婚だし祖父は祖母の愚痴を聞く素振りはなかったし、冷えた関係かと思っていたがそういうものではないようだ。
夜は祖父とお酒を飲む機会が多かったので、戦時中のことなど聞き出そうと思ったが無理だった。何年くらい軍隊にいたのかも定かではない。高等小学校を卒業してすぐに入隊したとすれば、七年くらい軍にいたことになる。外地を転々としていたらしい。戦時中は人を殺したかも知れない。妻の死を目前にした80代半ばの祖父に、過去の人生を聞き出していいものか、戸惑って深くは聞けなかった。