管啓次郎『コヨーテ読書』

コヨーテ読書―翻訳・放浪・批評

コヨーテ読書―翻訳・放浪・批評

フランス語や英語やスペイン語からたくさんの本を日本語に訳している翻訳者であり、またクレオール研究の学者でもある著者の手からなる。言葉が混じり合い、ぶつかり合うところに身を置いた時の体験や、それが現れた文学に対するエッセイ集。翻訳という作業、異文化との接触クレオール、そんな単語に反応する人にはおすすめしたいと思う。著者が探しているのは、「上手い翻訳の方法」などではなく、一つの文化ともう一つの文化(何を一つの文化と定義するか、ということにさえたくさんの問題点があるとは思うけれども)のあいだで何かを伝えようとするときに何が起こるのか、ということであるようだ。その手探りの様子が、わたし(たち)が他の文化と接触するときに力をくれるのではないかと思う。