宮元啓一『日本奇僧伝』

奈良時代から平安時代末期まで、日本に現れた変わったお坊さんを紹介。逸話を中心にまとめてある。仏教に疎くとも、読みやすく現代語に訳された説話から見えるお坊さんの奇々怪々な行動がおもしろく飽きない。
読んでると俗世間以上に俗世間らしいお寺の世界を忌み嫌って遁世した人々の向かう先に「箕面」がいくつか出てくる。今でこそ、大阪の果てという感覚はあるものの市内と直結しているが、摂津の国は山を越えた向こうにあったのだ。勝尾寺は商売根性がギラギラしている寺に見えるが、官制仏教を嫌った行巡が住んでいたり、勝如も住んでいたりしたそうである。行巡は、清和天皇の病を治すため参内を命じられたとき、断固として拒否した。「王土に住んでいながら従わぬとは」との弁に対し、杖を地面に刺し、その上にむしろを敷いて座り、それでもだめというなら、と今度は空中に浮き上がったという。瀧安寺に至っては、役小角が建てたとか…。役小角は神通力を手にして神様まで懲らしめたというとんでもない人である。「箕面奇僧巡り」など出来てしまいそうだ。
あと、明王院葛川寺というのも、滋賀の大津市にあるらしいがそこも素敵そうである。行くのがとても大変そうだが。

いい本だったから、友達にプレゼントしようと思う。

日本奇僧伝 (ちくま学芸文庫)

日本奇僧伝 (ちくま学芸文庫)