オーベルニュ

去年の夏にフランスの片田舎で過ごした日々がひどく懐かしくなった。気のいい友達が故郷をありったけ紹介してくれた。パリももちろんすばらしかったし、トゥールーズも楽しそうな街だったし、どこだって旅行するのはよいものだ。でも、やたらと天気の悪かったあの一週間は忘れがたい。クレルモンフェランの街で地図を片手に道をうろうろと歩いたこと、数知れぬ小さな村を連れ回されたこと、意味もなくお供したリヨンで待たされて駅でずっと読めもしない雑誌を眺めていたこと、悪天候の中昇ったル・ピュイの聖母像(日本の悪趣味な巨大仏像のようであった)、おいしい手作りの晩餐、いとこたちまで交えた昼食、寿司パーティー、かしこい牧羊犬たち、アホな羊どもなどなど…。もてなしがすばらしくて、あんなもてなしを日本で出来るのか自信がないくらい。友達はまれに見るいい人だが、あんな人たちの中で育ったのならそれも納得できるようなすばらしい家族だった。懐かしいな。