060 小島剛一『トルコのもう一つの顔』

トルコの表向きの顔、とはどこまでも親切で人懐っこく、日本人にとっては親日がうれしい人々である。もう一つの顔、とはトルコ内にはトルコ語を話すトルコ人しかいないと少数民族を徹底的に弾圧する強硬な姿勢だ。著者は少数言語話者の調査に赴く過程でそれを深く知ることになる。時に留置所にぶち込まれ、土地の者からは抑圧のエピソードを聞く。偶然共に旅行することになったY氏のつてで、トルコ政府の許可を得て少数民族の住む地域を訪れるも、政府が派遣する「随行者」から大なり小なり妨害を受ける。最後に提出を求められた報告書で「クルド語は言語か?」という言語学者にとってはあまりにも馬鹿馬鹿しい質問に答える羽目になる。
著者は他には日本語では本を出していないらしい。ローマ字で検索したところ、ラズ語の辞書を1999年に刊行しているらしいことが分かった*1。他にもトルコ語サイトはいくつかヒットしたものの、読めないので内容は不明。現在のトルコを語る本もあったらぜひ読みたいので残念。言語学の調査記録でもあるが、緊張感ある逃避行の記録でもあり、不謹慎かもしれないがおもしろい。

トルコのもう一つの顔 (中公新書)

トルコのもう一つの顔 (中公新書)