昨日、『愛より強く』を途中まで見ていた。字幕をつけていなかったので会話の内容はすべて事前にネットで仕入れたあらすじと場面の雰囲気からの想像に頼るしかなかったのだが、とにかく「痛い」映画であまり集中して見る気になれなかった。
トルコ系の中年男性ジャイト(妻を亡くして自暴自棄、とネットで探した情報であとで知った)は自暴自棄で起こした事故の末精神病院に収容される。そこで、自殺未遂で手首を切り入院していた同じくトルコ系のシベル(若い女性。すごくかわいい)に目をつけられ、偽装結婚を迫られる。保守的なトルコ家庭から自由になるためにはトルコ人と結婚するしかないと…。最初は断るジャイトだが目の前でビール瓶を割ってそのかけらで自殺未遂を図られたりなどし、結局結婚することになる。二人は単なる同居人として暮らし、ジャイトは昔馴染みの女性(すごくすさんだ感じのロックな女性)と時たま会って関係を持ち、シベルは好みの男と夜な夜な遊びまくる自由を享受する。
と、ここまで見た。このあとまた重い展開が待っているそうなので見るのが辛い…。ジャイトの家のすさみ具合とか、リアルに薄汚く髪が張り付いている様子、ビール瓶で傷つけた手首からほとばしる血、手間をかけて作ったトルコ風ピーマンのご飯とひき肉詰め(ぜひ食べてみたいおいしそうな様子)をトイレに捨てて流すところ、など心に重くたまっていくシーンが多すぎる。料理を流すシーンの前には楽しげに買い物をするシベル、丁寧に食事の準備を進める様子を手を中心に追うシーン、二人仲良くきれいに整えたテーブルで食事をする姿、などが映されてその後が痛い。
監督自身もトルコ系だそうで、まさに自分の問題なのかもしれない。異文化の衝突と向き合わざるを得ない移民二世の人で、なんとか危機を乗り切ったらしい人の持つ魅力はすばらしく、うらやましく感じることすらあるけれど。ヨーロッパが他の民族も到達すべき最良の地点にあるという文化の中で教育を受けて、家族よりも個人の方を大事にする人々の中にあって、家族の中では保守的なルールに従わざるを得ないというのは、想像しがたい状況だと思う。家族の結びつきを賞賛する伝統を無碍に否定してはトルコ系としてのアイデンティティもどこかに行ってしまうし。
日本語の予告編が見つからなかったのでフランス語版を貼っておきます。

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