ただいま。

はてなに何も書いていないあいだに、就職が決まり、ばたばたと家探しをして引っ越し、混雑や雨を理由に簡単にダイヤが狂って大混雑につながる東京のもろさに苛立ちながら、じょじょに新しい環境に慣れていこうとしています。インターネット工事がなかなか終わらず、メールを書くこともできなかったし、その前にものを書こうという気にもなりませんでした。読むものと言えば、仕事では英語の明細書とそれを日本語に訳したものであり、それ以外では余力があるときには仕事につながる法律や物理関係の本を眺めて苦しんでいました。新しい世界を知ることは好きですが、英語でしかも理系、となると話は別で、仕事だから努力するしかないと思っているものの、時に一種の苦行に感じられます。仕事があって自分で生活を組み立てているという実感は精神衛生上はよい部分もあるけれど、誰とも生活を分かち合っていない現状に無性に寂しくなりつつ何とか暮らしている感じです。

今日は久しぶりに仕事とは関係のない本を読みました。翻訳に携わる人々(全部文学関係の翻訳ですが)の連載をまとめたもので、文学作品や、翻訳者たちの書いたものを読みたくなりました。私自身は人よりずいぶん長く文学研究畑の近くにいたというのに、文学的センスというか、文学にはまり込める感性には欠けていることはよく分かっているけれど、文学や言葉に取り憑かれたひとびとが熱心にすすめるものや体験談の後追いを自分もできるのではないかといつも錯覚してしまいます。異なる言葉と言葉のあいだに現れる溝の楽しさを多和田葉子が語れば、何かスペイン語で書いてみたらもしかしたら楽しいのかもしれない、と思ってしまうし、ミヒャエル・エンデの『鏡の中の鏡』の話が出ればあの不思議な短編を訳が分からないなりに読んだことを思い出して、できればドイツ語で読んだら楽しいだろうにとできもしないことを夢見てしまう。そして、最後にこうした本を読んだあとには、人に何かのおもしろさを伝える文章が自分にも書けたらよいのにと考えます。薦められているものそのものよりも、その人の文章から喚起される何かの方がおもしろそうに見えてしまうようなそんな文章を書きたいと思うのですが、何についてかは分かりません。

性懲りもなくぼそぼそと続けていきたいと思いますので、また読んでいただければ幸いです。